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【TPPの危険性】韓国のFTAを取り巻く政治・経済的意義と経済的影響について(毒素条約10項目):柳 京煕准教授

以下、http://tpp.main.jp/home/wp-content/uploads/b66fdd3c3b0960c21cde33aea39199c9.pdfより写経(写し書き)。

韓国のFTAを取り巻く政治・経済的意義と経済的影響について(抜粋)

酪農学園大学 食品流通学科
准教授 柳 京煕(ゆう きょんひ)

米国・韓国FTAの主要部門別妥結内容

2005年2月3日に第一回韓・米FTA実務者事前会議がソウルで開催されてから約2年の歳月を経て、2007年4月2日に韓・米FTA交渉は妥結した。
 韓・米FTAは商品、サービス、貿易救済(trade remedies)、投資、知的財産権、政府長達、労働、環境など、貿易に関わるすべてを含め包括的なものである。外交通商部によれば、韓・米FTAの経済規模は14.1兆USドルで、NAFTAの15.1兆USドルに次ぐ。当初、容易だと思われていた国会批准であったが、両国の議会批准同意案が通らず、2009年5月14日に新たな再交渉を経て、2010年12月3日に追加交渉が最終妥結し、現在、両国の議会の批准を目指している。
 追加交渉では、これまで米国に大きな不満であった自動車部門に大きな変化をもたらし、米国が有利な方向で変更された。韓国政府は、米・韓FTAの交渉にあたって実質的な担当者である通商本部長(*1)のプレス発表を通じて「自動車部門で米国側の要求を一部受け入れた面はあるが、韓国は豚肉、医薬品、企業ビザ部門で一部譲歩案を引きだすことが出来た」と述べた。
 同本部長は、「米国の自動車関税撤廃の日程調整に対する高いレベルの要求があったため、交渉が難しい局面に直面することもあった」とし、「韓・米FTAが、韓国国民とメディアの主要な関心事項であったことを深く留意しながら協定分修正を最小限にし、全般的な利権の均衡を追加することによって、相互受け入れ可能な結果を導き出し、韓米両国にとってウィン‐ウィン(Win-Win)効果を作ろうと最善を尽くした」としている。
 これで2005年2月から始まった韓・米FTAは5年を超える時間を要しながらやっと最終締結い辿りついたが、その道程はは相当険しいものであった。
(*1)長官クラスの権限を有しており、すべての官僚組織を管轄できる権限を大統領から与えられた。
次節以降は、米・韓FTAの交渉結果について考察を行う。2010年の追加交渉にとって変更がなされた部分については変更内容を付けくわえた(*2)
(*2)韓米自由貿易協定(FTA)追加協議の結果、韓米両国は自動車の関税を従来の発効3年後から5年後に撤廃する代わりに、豚肉輸入に対する関税撤廃時期を2年延長する一方、米国派遣労働者に対するビザ有効期間を1~3年を5年に延ばすことで最終合意した。農業部門において2007年の妥結と変更された内容は、旧協定分で2014年になっていた米国産豚肉(冷凍肉、首まわりの肉、骨なしカルビなど)の関税撤廃時期を、2016年まで2年延長したぐらいで大きく変わったことはない。

①繊維部門
 従来から韓国のドル箱と言われた最も競争力を持つ繊維部門は、2006年時点での韓国の対米輸出のうち、わずか約4%(衣類2.5%)に止まっている。さらに輸出額は2005年の23億ドルから2006年には20億ドルと減少しており、過去の栄光はもう見られなくなった。
 しかし米国からの繊維類の輸入額が2億1,900万ドルに過ぎないため、年間約17億ドルの対米貿易黒字を出していること、また、製造業の全体雇用水準からみれば、まだ繊維類(衣類を含む)部門は10.5%と高い。
黒字幅からみれば自動車、無線通信機器、半導体などと共に上位にランクされているために、韓国にとっては最も興味ある部門である。
 対米輸出平均関税率は繊維が9.2%、衣類が10~20%であり、USITC(米国国際貿易委員会)報告書によると、米・韓FTA妥結の際、韓国側の代表的な輸出増加品目として仕分けされている。
 米・韓FTAにおける背に部門の大きな争点は関税率引き下げ幅、適用品目、関税率引き下げ譲歩時期、セーフガード適用可否、原糸原則(yarn-forward)の緩和および「開城工団製品」の認定で区分される。
 表1の妥結内容を見ると、多くの品目において即時撤廃割合は米国側が品目数基準で86.8%、輸入額基準で61.2%を譲歩した。一方、韓国側は品目数基準で97.6%、輸入額基準72%であるために、単純な数値上では韓国側が不利とみられるが、実質的に韓国が圧倒的に強い部門であるために、数値の比較はあまり意味を持たない(*3)
(*3)米国からの繊維の輸入量は大きくないため、今後大きな増加はないと考えている。ただし、韓国で生産しない一部高機能先端製品の輸入だけが増加すると予想されている。どちらかと言えば韓国に有利であるとの楽観的見通しが主流である。
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政府関連の研究機関である『産業研究院』が、2015年に、繊維輸出は現在の2倍水準である約40~44億ドル(黒字幅10億ドル以上拡大)と見通すほど、繊維部門は米・韓FTAによって最も輸出増加が期待されている。
しかし妥結内容を詳細にみると、繊維部門の楽観的見通しには様々なもんがいが潜在している。
まず短期的な側面から見ると、当然こう関税率が下がるために、ある程度輸出効果は現れると考える。しかし長期的に見れば、かつて1980年代のような主力的輸出品目になるとは到底考えにくい。
 その理由として、韓国側の主要輸出期待品目であるポリエステル帳繊維織物と男子用綿シャツなどは5年、化繊方織物などは10年と、関税譲歩が留保された。
譲歩留保部門の割合は決して小さくない38.8%であり、米・韓FTAの効果が直ちに発揮されるには時間がかかる。さらにyarn-forwardが緩和されたことは確かであるものの、その数が5~6品目に過ぎず、むしろ繊維業界の全般的な要求事項であったファブリックフォワード(Fabric Forward:原糸ではなく染付や縫製工程まで自国で行える衣類製品原産地基準)は棄却され、韓国側の繊維類主要輸出が衣類(54%)であることを考慮すると、政府の公式見解である『衣類輸出の飛躍的な増大』は事実上困難であると言わざるを得ない。
 確かに関税の引き下げは一時的な競争力の改善には役に立つかもしれないが、根本的な競争力の確保という視点から見れば、中国やベトナムなどの競合国が大きく飛躍しており、韓国が有利と言いきれない。さらに原産地基準をめぐる規定はすべて解除されていないために、付加価値向上を狙った部門への転換が思うように進まない可能性が出ている。

②自動車部門
自動車部門における妥結の主要内容は関税と環境安全などに大きく区分することが出来る。
 韓国の自動車生産の推移を見ると、2004年に347万台、2005年に370万台、2006年に384万台を生産している。内需は2004年に109万台、2005年に114万台、2006年に93万台(そのうち輸入は5.6万台)に推移しており、伸び悩んでいることが分かる。
これに対し、輸出は2004年に238万台、2005年に258万台、2006年に265万台に推移している。全体的に見れば輸出割合が約70%を占めており、輸出依存度が非常に高い部門である。しかしながら対米自動車貿易収支は2004年に101億ドルを頂点とし、2005年には87.5憶ドルと、減少している。
 韓国車の米国市場シェアは約4.3%であるが、一方、米国産完成車の対韓輸出は3,811台に過ぎず、米国車の韓国の市場シェアは全体の0.4~0.5%に過ぎない。しかし、輸入車市場は2006年4.2%(それでも台数基準で見ると21%増加)であるものの、金額基準では13.6%を占めるなど、高級車市場を中心として非常に早い成長を見せている。
 監視者以外の部品輸出の状況を見ると、2006年に21億ドル(輸出比重5%)まで急増した。対米部品輸出の増大はGMなど米国メジャー自動車企業などの自動車部品グローバルネットワーキング戦略の一環として、米国以外の国に会おうとソーシングした結果である。

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以下、米・韓FTAにおける自動車部門の妥結内容についてみることにしたい。自動車部門は最初の交渉と追加交渉の結果が最も大きく変わった部門であるが、最終的に韓国が米国に大きな配慮を見せる結果となった。

◯2007年の合意で懸案として残って地た韓国製自動車に対する米国の輸入関税については、韓国勢にシェアを奪われることを懸念する米自動車産業に配慮し、2.5%の関税を5年かけて段階的に撤廃することで合意した。一方、韓国側は、米国製自動車に対する関税を即時撤廃を半減させ、4%とする。米国が韓国製トラックに課している25%の関税は8年間存続し、韓国の米国製トラックに対する関税(10%)は直ちに廃止される。
◯排気量基準税制(特消税:3段階を2段階で改正、表3を参照)
 ‐現行:800cc以下 免除、800~2000cc 5%、2000ccを超える場合 10%
 ‐変更:1000cc以下 免除、2000ccを超える場合はFTA発行の際8%から3年後5%に引き下げる。
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◯環境基準
 ‐強化された排出ガス基準適OBD(排出ガス自己診断装置)装置義務化
 ‐米・韓FTAの専決条件として米国が以前から強く主張していた1万代以下の国内販売実績がある場合、規制緩和の適用要求は2008年まで認められていたが、2009年からは100%装着が義務化された。
◯安全基準(建設交通部が輸入車に対して強制リコール発生時に韓国検査項目適用)
 ‐米国など輸入車に対して強制リコールが起きた場合、韓国の安全基準に適用するように合意
 ‐ただし、韓国に少量輸入される場合、韓国の安全基準に合わせるために別途生産ライン構築が難しい点を勘案して、年間6,500台以下(追加交渉で2万5,000台)の場合、韓国か米国の基準のいずれかを選択できるようにした(最終的米国の安全基準だけでクリアすれば問題ないことになった)
◯自動車標準協力
 ‐自動車標準(安全及び環境基準)関連における両国政府及び国際機関での協力強化
 ‐自動車標準作業班(Automotive Working Group)を設置し、相互主義に基づき、自動車標準に関わる情報提供、業界の意見などを随時反映する。
◯追加交渉で韓国産自動車とピックアップトラックの対米輸出が急速に増加した場合、米国は輸入緊急制限措置が発動できるようになった。自動車は15年、ピックアップトラックは20年間、特別関税が認められた。

 以上、米・韓FTAにおける自動車部門の妥結内容を考慮したが、自動車輸出を楽観視するFTA推進論者によれば、韓国の自動車市場(100万台)と米国自動車市場(1700万台)の規模差は韓国にとっては市場拡大に繋がるという楽観的な認識を前提としている。
「産業研究院」の試算では、8億600万ドルの黒字増大府が期待できるという将来推計を公開している。しかし、このような試算の根拠は市場規模拡大という漠然とした期待感を極大に表したことに過ぎない。市場をあまりにも静態的に捉えただけで、競合国との関係、また実際交易効果や自動車生産のグローバル化、ネットワーク化という動態的な視点が欠けている。各国の自動車産業が米・韓FTAによってどのような影響を受けているのかについて、もう少し詳細な分析が必要である。
本報告書では動態的な視点の欠如としてどのような認識不足があるのかについて検証したい。

 第一に、米・韓FTAの妥結結果を詳細に分析すると、まず米国側2.5%の関税引き下げが韓国の産業全般に与える影響が実際より拡張されていることである。
韓国の主力輸出者である3,000cc未満車の場合、2.5%の関税効果は1台平均輸出単価である15,000ドルを基準として想定すれば、わずか300~400ドルの引き下げ効果しかない。
このくらいのレベルは近年の為替レートの推移を見ると、大きな意味を持つとは言えない。
自動車の価格い競争力は通常10%以上(韓国の車メーカーの最大手である現代財閥が対中国市場攻撃のために行なった事例などから)である時、効果を発揮するという現実を勘案すれば、即時に大幅な輸出増大効果に繋がれるか少々疑問が残る。

 第ニに、韓国の現代や起亜自動車の2006年の営業利益率は3,000cc未満車の場合1%、3,000cc以上車は4%であった。2006年現代社の純利益は35%減少、起亜車は甚だしくは影響赤字(2006年1,252億ウォン赤字計上)状態となっている。
主に収益が発生する3,000cc以上の大型車の輸出は現代車が全体の13.2%(台数基準)に過ぎないため、3000cc以上の自動車を輸出主力に据えない限り、ただちに関税効果が期待できると、期待することはなかなか困難である。それに加えて、米国側の関税撤廃期限を従来の3年後から5年後に変更したことは韓国にとって有利な交渉結果とは言えない。
最後に、対米自動車輸出市場は急速に委縮していることを指摘しておこう。更に韓国の自動車メーカーが現地生産に切り替えている現実を見落としている。

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 表4で見る限り、現代車の北米地域車輸出は2005年に前年対比で-25%、2006年に-26.6%と、大幅に減少している。2006年時点で輸出及び現地生産の割合はすでに50:50にまで到達した。起亜車も現地の生産工場が2010年3月に年間三十万台の生産ラインが完備されたことで、輸出と現地生産の割合は50:50となった。今後、現地生産に投資が集中することを予想すれば現地生産の割合はすぐ60%を超すことが予想されている。このような現状を全く考慮せず、FTAによる関税率撤廃効果を現状より多く見積もっている。
 北米地域の車提供構造がこのように現地生産に切り替わった一番の要因は、米国現地での部品調達率(70%)義務化をはじめとする米国の強力な産業保護規制が一貫しており、それをクリアするために、現地生産を余儀なくされている。
更に今後、中国や東南アジアの車生産ラインが本格的に稼働するようになれば、韓国車が持つ、中・低価格の市場競争力は薄れてしまうと十分予想される。もうすでに中国の車メーカーとクライスラー、GMが提携・合作を進んでいる。とくに2010年以降、米国向けに軽自動車とピックアップトラックの生産計画が着々と進んでおり、韓国にとってはむしろ競合が激しくなる可能性さえ出ている。
 一方、米・韓FTA妥結によって、国内市場の地殻変動の可能性にも注意を払うべきである。まだ米国車の国内市場占有率は1%未満であることから非常に過小評価される向きがある。しかし、実際の事情はそれほど楽観的ではない。
まず、韓国は米国のよう級通りに、排ガス期せ順による3段階税制改正に合意したことで、特別消費税(*4)の引き下げによって実質的に13%(関税率8%+特消税5%)税率引き下げ効果が期待される。
(*4)特定商品とサービスに限って別途の高い税率で課税する租税制度。
 自動車業界では価格競争力の一つの経営指標を10%水準で見るために、米国車の販売は非常に有利となったことは確かである。しかしこのような税率引き下げによる米国車の競争力増大は全く知られていない。
 排気ガス基準税制改正によって米国車は平均450~500万ウォン以上に達すると予想されており、米・韓FTAによって国民の負担は従来より大幅に増加することとなる。

 以上のように、米国車の韓国市場シェアが低いから、米国車の輸入影響は些細であり、2006年の輸入車の増加率は前年対比で21.2%と成長しており、輸入車の2006年市場シェアは4.2%(台数基準、2007年4月時点5.3%)に過ぎないが、金額割合では13.6%まで伸びている。今後、特消税および排気ガス基準自動車税制改正効果が加われば米国車の場合は13%、ヨーロッパなどの車は5%台の価格引き下げ効果が発生するために、輸入車の市場シェアはさらに成長すると予想されている。最悪のシナリオは韓国自動車市場が世界自動車グローバルネットワークに編入され、国内部品産業部門は下請け部品の基準に転換される可能性が十分ありうる。実質的に国産車の最大手である現代と起亜車の外国人の株式持ち分が47%(2006年時点)に上るなど、外国資本への依存度が非常に高い。このような経営内部の問題を全く考慮しないで輸出増大という淡い夢を見るのはいかがなことであろうか。
 世界進出という大きな夢の前に、外国資本に吸収合併された事例(大宇・三星・双竜車)が繰り返される可能性は否定できない。

③医療・医薬品部門
 米・韓FTAは医薬品、衛生検疫措置の放棄、GMO危険性評価放棄、保険政策及び環境政策に対する投資家の政府提訴権の認定、自動車排気ガス規制の放棄、民間医療保険商品の事実上許可制への転換、公企業の商業的運営などあらゆる方面で規制緩和を踏み切った結果となった。本来、市場の失敗が起き、政府の介入によって辛うじて安定化を図ってきた部門においても、歴史的経験と教訓を忘却したように、国民経済の安定より新自由主義的経済政策へと舵を切った。今後、経済弱者への基本的生活保障はもちろんのこと、国民健康の維持さえも困難になる可能性が高い。

◯医薬品に関わる交渉結果
 医薬品に関わる米・韓FTAの交渉結果は、米国の要求を殆ど受け入れる結果となった。まず争点となっていた医薬品の独占・特許に関わる内容からみると、当初の米国の要求をそのまますべて受け入れる格好となった。
 ‐医薬品の許可とともに独占的特許を同時に認める(*5)
 ‐同一医薬品ないし類似医薬品の資料の独占権を認める。
 ‐許可認定の遅延により、発生した損害は伸びた期間に応じて補償を行う。
(*5)多国籍製薬会社によって得られる利潤は年間200~300兆ウォンと予想されている。実際、高い医薬品のせいで疾病治療が出来ないまま年間1,400万名が命を失っているという(国連世界保健機関、2005)。
 ‐医薬品に関わる政策に対し、異議申し立てが可能となった:実質的自国民のための適正な薬剤費の決定が出来なくなる可能性が高くなった。内政干渉とも取れるような条件を丸呑みした形での交渉結果である。
 ‐医薬品・医療機器委員会設置
 ‐独立的異議申し立て機構の設置
 ‐専門医薬品の広告許可:医薬品の高騰をもたらす可能性が高い(*6)
(*6)米・韓FTAにおいて「医薬品・医療機器委員会」を設置することで合意したために、米国の医療機器輸出に対して規制を加えることが非常に困難となった。これは医療機器に対する適切な社会的規制及び社会的資源の適切な配分を根本から否定する結果となり、今後、高医療費の負担が国民に機能すると懸念されている。

 以上、簡単に医薬品をめぐる交渉結果を紹介したが、最も深刻なことは、米・韓FTA投資協定(協定分11章)に認められた投資家と国家間の紛争解決手続き(Investor-State Dispute  ISD)の条項である。もし、韓国政府が国民健康保険を強化する政策をとった場合、保険会社は直ちに民間医療保険市場の縮小を盾に韓国政府に対し、損害賠償請求訴訟を起こすことが可能となった。
 こうした問題提起はかなり前から関連団体が指摘していたが、政府は「韓・米FTA協定では公衆保健、安全、環境及び不動産価格安定といった正当な公共の福祉を阻害する交渉は原則的に応じない」としており、公共性を持つ事業において損害賠償請求は原則的に出来ないと明言している。しかし提訴の事例は全世界で多数確認されている(*7)
(*7)米国廃棄物処理業者メタルクラッド社の事例が代表的である。メキシコで廃棄場を運営する米国のメタルクラッド社は、廃棄場周辺の環境が空隙に悪化し、メキシコ政府が廃棄場の許可を取り消したことで、メタルクラッド社は投資への不当な侵害として投資家・国家紛争解決手続き制度を発動した。結局、メタルクラッド社はメキシコ政府に勝利し、利益を確保した。韓国においても同じようなことが起きる可能性が高くなっている。今後、米・韓FTAが施行されると、例えばある治療に対し、健康保険を通して国民への医療サービス向上を図る場合(例えば癌などで)、米国系保険会社のAIGなどが政府を相手に損害賠償請求訴訟を起こす可能性が高い。この規定は、米・韓FTAの投資家・国家紛争解決手続きに含まれ、政府の医療に関わる政策推進を実質的に妨害する措置となっている。
 韓国政府は米・韓FTAの交渉中、一貫して教育と医療部門の開放はないと断言してきたが、米・韓FTA協定においては経済自由区域での健康保険適用指定制(医療機関であれば健保適用強制規定を受ける)例外の許可と営利病院の許可(病院の株主または債権者に対する利益配当許可)を明文化したことで、事実上、公的健康保険の基本的構図を崩す措置を取った。
現在、経済自由区域は仁川、光陽、釜山など3つの地域が指定されているが、仁川では600秒小規模のニューヨーク基督長老会病院(NYP Hospital)が建てられている。この病院はすべて個室のみで完備されており、医療にかかわる費用を病院経営者自ら決めることが出来る(健保適用指定制の例外)。
 この病院は現在、韓国内の健康保険指定医療費の6~7倍の医療費を請求するとして知られている。従来、教員外部に利益配当が出来ないこととなっているのに対し、病院の株主や債権者に利益配当が出来るようになった。
 このような経済自由区域内の医療行為に対する特別な許可は、韓国内の脆弱な医療システムを辛うじて支えてきた公共性が根本的揺らいでいる(*8)
(*8)国民健康保険を支えた公共性とは3つの柱に構成されている。
①健康保険適用指定制、②病院の非営利団体規制制度、③国民すべてが公的医療保険に加入する国民皆保険体制
 現在、韓国の民間の医療保険の規模は約12兆ウォンとなっており、約30兆ウォン規模と言われている国民健康保険の30%に達する勢いである(*9)
(*9)韓国民主労総「韓米FTAの『操作された経済効果』批判と本質的な問題点」2011年1月、より引用
米・韓FTAによって公的健康保険制度の発展と公共性が強化できなくなれば大きな問題になる。

④食品安全性
◯米国産牛肉の無条件輸入:衛生検疫措置放棄
 米国会計監査院資料を引用することもなく、危険部位の除去を行わないまま輸出することはしばしばであり、それによって米国産牛肉の輸入禁止措置を頻繁に行なっている。
 さらに韓国は米・韓FTAによりOIE勧告条項(*10)を強制条項として承認した。
(*10)国際獣疫事務局を指す。1924年に28カ国の署名を得てフランスのパリで発足した世界の動物衛生の向上を目的とする政府間機関である。動物衛生や人獣共通感染症に関する国際基準の作成などを行なっている。
OIE規定は勧告条項であるだけにヨーロッパやオーストラリア、ニュージーランドは最小限の米国産牛肉だけ輸入しており、日本はOIE規定より厳格な措置を実行している。

◯遺伝子操作食品規制撤廃:GMO 危険性
 米国の安全検査の結果に従い、GMOおよびこれとの交配種の場合においても安全検査除外することとなっているが、米国のGMOに関する事前検査は企業の書類審査のみでFDAの検査は行われておらず、客観的な安全性は確保されない可能性が高い(*11)
(*11)米国企業の安全性検査は国際基準ではない。
また、輸入が承認されたGMOの場合、別途の承認および別途検査を必要としない。
 今後、GMOに係る規制措置を事実上放棄したために、国民健康の安全は確保できない状況である。

 以上、米・韓FTA妥結結果とその問題について部門ごとに詳細に見てきたが、得るとされる経済効果よりも
多くを失う可能性が高いことが分かった。特に米・韓FTAで交わされた「毒素条約」を見ると、明らかに韓国に不利な交渉結果であることが明らかである。
それを整理すると以下のとおりである。

1. サービス市場開放のネガティブリスト(Negative list)
 サービス市場を全面的に開放する。例外的に禁止する品目だけを明記する。
2. ラチェット(Ratchet)条項(逆進防止措置):
 一度規制を緩和するとどんなことがあっても元に戻せない、狂牛病が発生しても牛肉の輸入を中断できない。
3. Future most-favored-nation treatment(未来最恵国待遇)
 今後、韓国が他の国とFTAを締結した場合、その条件が米国に対する条件よりも有利な場合は、米国にも同じ条件を適用する。
4. Snap-back :
 自動車分野で韓国が協定に違反した場合、または米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすと米企業が判断した場合、米国の自動車輸入関税2.5%撤廃を無効にする。
5. ISD条項(Investor-State Dispute Settlement)
 韓国に投資した企業が、韓国の政策にとって損害を被った場合、世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターに提訴できる。韓国で裁判は行わない。韓国にだけ適用。
6. Non-violation Complaint
 米国企業が期待した利益を得られなかった場合、韓国がFTAに造反していなくても、米国政府が米国企業の代わりに、国際機関に対して韓国を提訴できる
 例えば、米国の民間医療保険会社が「韓国の公共制度である国民医療保険のせいで営業がうまくいかない」として、米国政府に対し韓国を提訴するよう求める可能性がある。韓米FTAに反対する人たちはこれが乱用されるのではないかと恐れている。
7. 韓国政府が規制の必要性を立証できない場合は、市場開放のための追加措置を取る必要が生じる。
8. 米企業・米国人に対しては、韓国の法律より韓米FTAを優先適用
 例えば、牛肉の場合、韓国では食用に出来ない部位を、米国法は加工用食肉として認めている。FTAが優先されると、そういった部位も輸入しなければならなくなる。また、韓国法は、公共企業や放送局といった基幹となる企業において、外国人の持ち分を制限している。FTAが優先されると、韓国の企業が外国人持ち分制限を撤廃する必要がある
9. 知的財産権を米国が直接規制
 例えば、米国企業が、韓国のWebサイトを閉鎖することが出来るようになる。非営利目的のBlogやSNSであっても、従来、韓国で一般的に容認された考えと、著作権に対する米国の考えは全く相違しているため、訴訟が多発する可能性があると言われている。
10. 公企業の民営化

⑤米・韓FTAの問題点
 以上、内政干渉ともいえる内容となっており、これで国民国家という枠組みが完全に消滅に向かっているとしか言えない内容となっている。国民はどこまで興味を持ってこの状況を見ているのだろうか。筆者が韓国に出向いて、FTA関連の書籍を検索した結果、ハングルで書かれた学術書は2冊しか出てこなかった。これほど、一般の韓国国民はFTAに対し、情報を得ることが出来ない。また、マスコミでは、以上のような内容について一切触れていない。牛肉騒動の際、放送を敢行したMBC(韓国文化放送)の関係者は裁判にかけられ、無罪を勝ち取ったものの、昨今の韓国の言論統制はその度を過ぎている。このような言論統制や世論操作によって米・韓FTAの妥結に成功したことも否定できない状況となっている。

以上。
(資料は10月18日「第8回TPPを慎重に考える会・勉強会」(講師:酪農学園大学准教授 柳京熙氏)の資料です。)
◆TPPを考える国民会議HPより 資料配布http://tpp.main.jp/home/?page_id=2
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韓米FTA 韓国企業が原産地証明で制裁受ける可能性
2011/12/04 15:10 KSThttp://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2011/12/04/0900000000AJP20111204001100882.HTML
【ソウル聯合ニュース】
韓米自由貿易協定(FTA)が発効すれば、原産地証明の管理が行き届いていない韓国企業が米国税関から制裁を受ける可能性が指摘されている。
 関税庁が4日までに、与党の国会議員の要請で提出した資料で明らかになった。これによると、米国企業は1980年代のカナダとのFTA発効時から原産地証明書の自主発効制を実施。企業が同証明書を管理するシステムが慣行化されているという。一方、韓国企業は米国税関の厳しさに対する認識が甘く、事前の準備なしに原産地証明書を発給すれば、制裁を受ける事例が多く発生すると予想した。制裁については、関税や国税、手数料などすべてを合わせた額の4倍の罰金が課される。
 関税庁は「米国は専門のコンサルティング会社に依頼し、原産地管理を一般化しているので、正確な業務が可能」と、韓国企業との違いを指摘した。
 今後、関税庁は輸出業者の原産地管理強化のため、原産地管理システム(FTA―PASS)を無料で配布。事前検証サービスや教育・コンサルティングの拡大、民間の原産地専門資格(原産地管理士)の設置を推進していく。
 また関税庁は韓米FTA発効で、メキシコやカナダの肉類や野菜が関税のない米国産と偽って入ってくる「迂回(うかい)輸入」の可能性も高まるとみて警戒している。
sarangni@yna.co.kr



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