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【日本の国境問題】2012.09.05 BS11 孫崎享氏出演 尖閣、竹島 日本の国境問題を考える③

日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 (ちくま新書 905)
■③2012.09.05 BS11 孫崎享氏出演 尖閣、竹島 日本の国境問題を考える


    


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山口一臣氏「それと、私たちとしては、今回の李明博大統領の行動が、李明博大統領のある種のアクロバティックな行動なのか、あるいは韓国の次期政権にそういうことが受け継がれていくのかというところをちょっと冷静に見ないといけないですよね」

金子秀敏氏「次の政権というのは、李明博さんよりもっとあげないと批判されますよね。ですから、そこが困ったことなんですよね」

山口「なるほどね。孫崎さん、いま日本はこの竹島についての問題は国際司法裁判所に提訴するという形で解決してはどうかという事を主張して、韓国はそれに乗って来ないんですけれども、この手法についてはどのようにご覧になっていますか?」

孫崎享氏「私は基本的に国際司法裁判所に持っていくという姿勢は評価するんです。なぜかと言いますと、長期的には、いかに公平で中立的なものが解決をするという形に持っていくことがいいし、両方で、これは俺のもの、俺のものだというと、どこかで衝突が起こる可能性があるわけですよね。だから、そういう事では、第三者を出来るだけ巻き込む。
韓国は確かに応じてません。だから、これが国際司法裁判所で審議されるという事はありません。だけども、これを言い続けることは、日本側が、我々の主張が正しいんだという事をある意味で韓国国民にも訴える事が出来るし、あるいは国際社会にも訴えることができる。そういう意味では、これからもずっとこの努力を続けていったらいいと思います」

山口「なるほどね。分かりました。ちょっといったんCMを挟んで、また続きをやりたいと思います」

<CM>

山口「今夜は尖閣、竹島、日本の国境問題を考えるというテーマで、作家で元国際情報局長の孫崎享さんをゲストにお迎えしてお送りしております。
孫崎さん、この問題はどうやって解決していくべきかというお話をちょっと追々伺っていきたいと思うんですけども、ちょっとその前に、今回の尖閣諸島に、香港の活動家が上陸して、日本の海上保安庁と沖縄県警が対応したということなんですけども、孫崎さんのこのご本の中では、2010年の菅内閣の対応について、どちらかというと批判的に、非常に問題が多かったというふうことをお書きになっていますけども、その菅内閣の対応の問題点と今回の対応はどうだったのかというところをちょっと解説して頂けますか?」

孫崎「はい。今回、さきほど金子さんがおっしゃられたように、これを日本政府も中国政府も、紛争を出来るだけしないような形でお互いに理解するという事を優先したと思います。そういうことでは、だいたい終局、うまくいっているんじゃないかと、こう思いますね。今回は。
私は、前回の問題は、実は日本の多くの国民が必ずしも理解されていない点なんですけども、この尖閣諸島の問題の非常に大きなことは、両方が主張しているなかで、いかに紛争にしないように努力するかということなんですね。そうすると、日中の間に、日中行業協定というのがあるんです。この漁業協定は何を言っているかというと、相手の国が仮に違反した、その時にどう対応するかというんですけども、これは船には直接触らないで、船にはとにかくその領域から出ていってくれという事を言う。そして、その処理についてはもしも問題があったら日中の間で合意すると。だからいきなり、船に公権力がいくと、これは向こうも激昂するんですよね。
例えば、韓国と中国の漁船の問題で死者が出たようなことがありました。そういうような不祥事が出ると、いきなり中国と日本の間でおかしくなってきますから、違反があった時にも、それは日本の公権力が出る形を取らないで、向こうの公権力にやってもらう。そして、その間で、もし解決がつかないとすれば、真剣な協議をやればいいんで、その手続きを経ないで、日本の公権力がいきなり、捕まえようとする。すると、向こうは暴れる。だから、実際に暴れて船にぶつかったということだと思うので、私はとにかく漁業の問題は。日中漁業協定の精神、できるだけ相手の国には、間違っていたら、やめなさい、そしてここから出ていきなさいという。そしてその処理について問題があれば、日中の間で協議をすると。この立場はこれからも取っていった方がいいと思います」

山口「ただ、あのときの菅内閣のスタンスとしては、日本の国内法で粛々と処理をすると言って、当初はかなり強気の姿勢というか、攻撃的というか、逮捕して起訴も辞さないぞというような姿勢だったんですけども、途中で腰砕けになってしまったと。その、国内法で粛々と処理をするという言い方は非常に問題がある」

孫崎「そうだと思います。長期になれば、これは考えて頂ければいいんですけれども、中国側が言っていることが正しいか、どこまで根拠があるかというのは問題なんですけども、一応、中国側もこれは自分の領土だと言っているわけです」

山口「主張しているわけですよね」

孫崎「そうすると、ある時期から中国は自分の国内法で粛々とやるという道もあるんですよね。日本は、国内法で粛々とやると。しかし、中国がじゃあ、俺は自分の領土だと言っているんだから、国内法で粛々とやるといったら、これはかなりぶつかるんですよね。それを避けるという知恵が私は必要なんじゃないかと」

山口「つまり、日本側は日本の領土だと主張している。中国側は中国の領土だと主張している。そういうなかで、日本が、あそこは日本の領土だから、日本の国内法で粛々とやるという事を主張し出すと、中国も、あそこは中国なんだからうちの法律でやるぞと言われかねないということですよね」

孫崎「そうです」

金子「中国は、相手がやったことと同じことをやるんですよ。例えば、今回、東京都が買うと言いましたよね。それのつい最近ですけども、中国が何をやったかというと、南シナ海のほうにある島を南沙市の一部にしましたよね。ですから、日本がこの島を買って東京都のものにするなら、同じことをやるわけです。で、同じ間合いを取ろうとするんですよね。ですから、一歩出ると、逆に上にあげてしまうんですよね。だからそれを長い時間かけて、公権力をいつだか島に上陸した人を捕まえますよね。捕まえても、これは強制送還は法の執行じゃないと説明するわけですよね。実は法の執行なんだけども、起訴してないから。そうすると、中国も起訴しなければ、そこで引くという約束を作ったんですよ。
ただ、前原さんが起訴へ持っていけ、持っていけとあげましたよね。そうすると、向こうもじゃあ、同じことをせざるをえなくなる。そうすると、向こうで、中国にいた日本人を捕まえましたよね。これを起訴するぞということになりますよね。ですから、両方が引けなくなるので、引ける余裕を作っておかなければいけない。それは、戦争したり、対決するメリットはどっちにもないわけですからね。それが分かっている人たちは良いですけれども、政権交代の直後で、カッカした人たちがいて、ポイントをとろうとしたんじゃないかと思うんですけどね」

山口「なるほどね。もうひとつ、孫崎さんの本を読んで分かったというか、感じたことなんですけども、さきほどの、出来るだけ問題が、争いが起きないようにと、そこでつまり例の棚上げ論といういうのがあるじゃないですか。その棚上げ論についても、当時の2010年の段階での菅政権は、棚上げはなかったという事を言っているんですね。このへん、実際はどうなんでしょう?」

孫崎「実際は、一番明確に言ったのは鄧小平が園田外務大臣に言ったわけですね。で、園田外務大臣はその時に鄧小平の発言に対して、自分は相手に抱きつかんばかりに喜んだ、というようなところがありますから、言葉は別にして、その場の雰囲気からいって、もう日本側が認めたことが間違いないんですね。これが歴史的な事実」

山口「それで、多くの日本の人はそこを誤解していると思うんですけども、僕も本を読んで、なるほど、と思ったんですけど、つまり棚上げというと、なんか本当に棚上げな感じなんですけども、棚上げという事はつまり日本の実効支配を認めるということなんですよね」

孫崎「そうなんです。わたしはこれで三つ日本に有利なことがあると思うんです。その三つは、一つはおっしゃったように両方が俺のもの、俺のものと言っている中で、これは日本の実効支配を中国側が認めたということなんですよね。これが一番大きいところです」

山口「つまり現状を追認したということですもんね」

孫崎「例えば、日本は竹島は何も向うの実効支配を認めてません。北方領土も認めてません。しかし、この問題は中国側が基本的には実効支配を日本のものを認めているんですね。これがひとつ。それから二つ目に、棚上げというのは武力で以って変更するという事をしないという事。三番目に、実効支配を長く続ければ続けるほど、法律的に自分のものになる、領有権の立場が強くなっていくんですよね。だから、この棚上げというのは実は日本に有利であって、中国側には必ずしも有利ではない」

山口「でも、その当時は中国としては棚上げをしてでも日本との関係をよくしたいという、そこは損得勘定みたいなのがあるわけですよね」

金子「その当時のビデオが残ってますけど、園田外相は鄧小平に抱きついてますよね。歓迎の時に、チューチューしてますよね。普通、日本人はそんなことしませんけどね。だけど、鄧小平とハグするという、そのぐらい良かったと思っているわけですよ。ただし、鄧小平の言葉というのは、まず主権は我にありと。そのあとで、その争いは棚上げにすると。だから、主権を捨てたわけじゃないけど、そこに着目すると中国は全然主権を、問題を解決してないと言っているけれども」

山口「妥協してないじゃないかと」

金子「だけど、後ろのほうをとればいいわけですよね。その最後に、共同開発しようと。だからもし、それが役に立つものなら両方で分けようと言っているだけの話で、それはその中で、主権われにあり、と言っても、相手の開発することを認めるわけですからね。だからそこに譲歩があるのに、それを詰めちゃったらダメなんですよね」

山口「そうですね。そこのところを領土問題というとついこちらも感情的になったり、ナショナリズムに鼓舞されたりして、棚上げという言葉を聞くと何となく、本当は我々の領土なのに棚上げというのは弱腰じゃないかという、まさに領土問題って弱腰という言葉が付いて回るんですよね。
孫崎さん、そういう意味で言うと、こういう領土に関する問題というのはどういう形で解決していく糸口はどこにあるんでしょうか?」

孫崎「基本的には、出来るだけ、さきほどのように国際機関へ持っていくとか」

山口「当事者同士じゃなかなか難しいですよね」

孫崎「例えば、南極条約というのがあるんですけれども、これも、俺が、俺がと言っているとあそこで難局を巡って戦争になると。だけど、これを一応、みんな領有権の問題はさておいて、それでお互いに協力しましょうということですから、難しい問題を横に置くというのは、これはある意味で積極的な外交なんですよね」

山口「なるほどね。そのなかで、お互いにメリットのあること、利益になることを追及していくということですよね。ヨーロッパなんかだとどういう考え方で」

孫崎「それは非常に、ヨーロッパは、例えばドイツ。ストラスブルグというのは、かつてはドイツ領なんですよね。ところがフランスが維持していることについては戦後ドイツは何も言わない。しかし、今ストラスブルグのあの辺というのは仏・独両方が入り乱れてるんですよね。通勤してくる人もいる、というようなことですから、領土問題の重要性というのは、実は両国関係が非常に緊密になってくると、それはかなり重要度が落ちてくるんですよね」

山口「なるほど。つまり、誰が持っていてもいいじゃないかと。それよりも、そこから上がってくるメリットをお互いに分けようよみたいな話で」

孫崎「昔だったら、日本の江戸時代だったら、藩と藩の境界線というのは重要ですけど、今、東京都と埼玉県の境界がどこであっても一緒ですからね」

山口「それからあと、交渉相手も必ずしも一枚岩じゃないということですよね。さきほどの棚上げ論でいうと、これもご本で読んで知ったことなんですけど、つまり棚上げを日本が否定すると中国の軍部が喜ぶという話ですね」

孫崎「本当です」

山口「それは要するに、軍にとっては争いがあった方が自分たちの存在価値が高まる。ところが政権の中枢は、そうじゃないだろと。仲良くしたいというふうに言っていて対立がある場合もあるということですよね。金子さん、なかなか難しいですね」

金子「ひとこと言うと、鄧小平路線、棚上げ路線と、反鄧小平路線というのは昔からあるんですよね。ですから、それを中国の中の権力闘争、そこを気を付けないと危ないですよ」

山口「そうですね。とにかく僕は今回、よくわかったのはまず勉強することだということですね。どうも有難うございました」

孫崎「恐縮です」

<以上、終わり>

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孫崎 享

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